アルマイトの寸法変化(太り)の計算式と「失敗しない」膜厚公差の指示方法

こんにちは
アルマイトを4月より開始してから、受注を多くいただいており順調に稼働しております。
そこで、今後アルマイトやその他無電解ニッケルめっきについてここへ技術紹介も兼ねてコラムを掲載していこうと思います。
さて、表題の通り設計者の方向けにアルマイトの寸法、膜厚公差についてお話したいと思います。
機械設計や図面作成において、「アルマイトを付けたら軸が入らなくなった」「公差から外れてしまった」というトラブルは絶えません。
アルマイト(陽極酸化処理)は、めっきのように「表面に載る」処理ではなく、アルミニウム基材を侵食しながら成長する表面処理です。そのため、膜厚管理と寸法変化(太り)のメカニズムを正しく理解していないと、前加工の段階で狙い寸法を外す原因になります。
本記事では、アルマイト処理による正確な寸法変化量の計算式と、現場でトラブルを起こさない「適切な膜厚公差の指示方法」を解説します。
1. アルマイト処理による「寸法変化(太り)」のメカニズム
アルマイト皮膜は、アルミニウム素地と酸素が反応して形成されます。このとき、「皮膜が成長する深さ(侵食)」と「外側に成長する厚み(成長)」の比率は、およそ 1:1(各50%)となります。
つまり、外形寸法が大きくなる量(片側の太り)は、「膜厚の約1/2」です。
寸法変化の計算例
- 外形(軸径・板厚など)の場合
- 白アルマイト(目標膜厚:6μm)
- 片側成長量:6μm×0.5 = 3μm(+0.003mm)
- 外径の変化(両側): +6μm(+0.006mm 太る)
- 黒アルマイト(目標膜厚:20μm)
- 片側成長量:20μm×0.5μm=10μm(+0.010mm)
- 外径の変化(両側): 20μm(+0.020mm 太る)
- 白アルマイト(目標膜厚:6μm)
- 内径(穴径など)の場合
- 穴の内側に向かって皮膜が成長するため、穴径は「両側で膜厚と同等分」狭く(小さく)なります。
- (例:20μmのアルマイトを処理した場合、穴径は0.020mm小さくなる)
2. アルマイト処理でトラブルを防ぐ「適切な膜厚公差」
めっきや塗装の感覚で「膜厚 10±1μm」といった厳しい指示を図面に記載されるケースがありますが、通常のアルマイト処理において ±1μmの工程能力を維持することは現実的ではありません。
電位集中しやすい角部・外周部と、液の回りにくい内径・止まり穴では、同一部品内でも膜厚のバラつきが生じるためです。
| 処理内容 | 目標膜厚 | 推奨膜厚公差 |
| 白アルマイト | 5~8μm | ±2~3μm |
| 黒アルマイト | 8~10μm | ±3μm |
※黒アルマイトの場合、膜厚が 5μm以下になると染料の吸着が不十分となり、「色ムラ」や「赤やけ(赤みがかった黒)」の原因になります。発色と安定性を担保するため、黒アルマイトは最低 8μm以上の設定を推奨します。
3. 図面作成・指示書で抑えるべき3つの注意点
高精度な部品加工を製作する場合、以下の3点を図面または指示書に明記してください。
① 前加工(削り)段階での「太り分」の追い込み
精密な軸径・穴径を管理する場合は、アルマイトによる寸法変化(膜厚の1/2/片側)を計算し、機械加工(旋盤・MC)の段階で前もって小さく(または大きく)削っておく必要があります。
② 測定箇所(有効表面)の限定
止まり穴の奥や微細穴の内径、および処理時に吊り下げる「治具接点部(電極跡)」は、皮膜が薄くなる、あるいは皮膜がつきません。
③ アルミ材質(展伸材 vs 鋳物・ダイカスト)の違い
A5052やA7075などの展伸材に比べ、AC4Cなどのアルミ鋳物やADC12などのダイカスト材は、素材に含まれるケイ素(Si)や銅(Cu)の影響で皮膜が成長しにくく、膜厚のバラつきが大きくなります。鋳物材へアルマイトを施す場合は、公差設定を通常より広めに設定する必要があります。
精密アルマイト・難削材への表面処理はご相談ください
「公差の厳しい嵌合部があり、前加工寸法の出し方に悩んでいる」 「他社で黒アルマイトの色ムラや寸法不具合を指摘されて困っている」
当社では、材質・用途に合わせた最適な膜厚設定のご提案から、試作処理、膜厚・寸法の厳密な測定データ管理まで対応しております。図面段階でのご相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

